小島動物病院AWC院長の小嶋です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の臨床と病理学に関わることを記載しています。今月は私の大好きな細胞の一つである好酸球についてご紹介します。

 

好酸球ってなんだ?

血液の中には白血球という炎症に関わる細胞が巡っています。好酸球はその白血球の一種です。細胞質内に、赤い顆粒がいっぱい入っているのが特徴です。好酸球は、ノミダニなどの寄生虫やアレルギーの症状に関連しています。当院ではエキゾチックアニマル診療科があるので、‘偽’好酸球についても紹介します。偽と表現されますが、立派な役割があります。鳥、うさぎ、モルモットなどの動物の好中球に相当する細胞です(好酸球が寄生虫やアレルギー細菌感染に関連して出てくるのに対し、好中球は細菌感染に関連しています)。

好酸球が出てきたぞ~。。。

好酸球が減るということはあまり大きな問題になることは少ないですが、免疫状態が弱くなっている時に見られるので、クッシング症候群やステロイドでの治療の時に起こります。反対に好酸球が増えるというのは、上述したようにアレルギーや寄生虫感染が起こっている時です。よって、好酸球の出現は、それだけで病気の特徴を反映してくれるとてもユニークな細胞だと思います。私と一緒で自己主張と自己肯定感が強いのかもしれません。

 

PCAP的 好酸球が関連する症状や病気の名前

私が関わる好酸球の病気は主に3つに分類されます。

  • 寄生虫感染(皮膚のかゆみ・赤みや下痢・嘔吐がみられます

ご紹介するのは、ダニに感染した皮膚病のワンちゃんと、回虫に感染した猫ちゃんの腸の中です。

ありがたいことに当院の飼い主さん達は皆さん、寄生虫感染症を始め、予防接種もされていますので、稀にしか見ることがありません。

 

  • アレルギー関連(皮膚のかゆみ・赤み、くしゃみ・咳、下痢・嘔吐がみられます)

アレルギーに関わる好酸球が関連する病気はたくさんあります。当院で診察をお願いされるもので特に多いのが、皮膚病と内視鏡を使った検査と治療です。

内視鏡は胃腸、肺、鼻の中に入れて細胞を採取して、好酸球が出現しているのを病理的に確認します。

  • 腫瘍関連(圧倒的1位が肥満細胞腫でみられます)

腫瘍関連では肥満細胞腫が圧倒的に多く、皮膚に出来る場合と、内臓に出来る場合があります。

 

病気の治療や予防

治療は原因となっている疾患に対する治療と困っている症状を緩和する治療を行います。例えば、寄生虫感染でしたら、駆虫薬を使う。当院は名前の通り、ウェルネスセンターですので、皆さん、予防をしてくださっています。アレルギーでしたら、引き起こしてしまう原因を避け、症状の緩和を計ります。肥満細胞腫の場合は、摘出手術と病理診断のグレーディングを行います。追加の抗がん治療が必要な場合、検討を行います。

これらの病気は飼い主さんを大変不安にさせます。例えば、皮膚の場合はかゆくて見ていられない、寝れない。アレルギーの場合は治らない、この先どうなるのか。肥満細胞腫はネットを見たら、悪いことばかりでパニックになるということをいつも経験します。ご家族の気持ちもサポート出来る診療を行いたいといつも心がけています。

私は、病理と臨床のシナジーで幸せな明日を創ることが大事であると考えています。

そういうのを何て言うか知っていますか?

そう。PCAPです。